山川代表からみなさんへ ③”“多摩エネ協”と“たまでん”

「 “たまでん”の最大の強みは何ですか?」よくそんな質問を受けます。裏を返すと「この会社大丈夫なの?つぶれないでやっていけるの?」という心配がこめられた質問でもあると思うのですが、そんな時、わたしは、「歴史もなく資本力も技術力も小さなわたしたちみたいなところが大企業と同じやり方で立ち向かっても勝負になりません。わたしたちの最大の強みは“多摩エネ協”という市民団体がついていることです」と答えることにしています。

多摩エネ協(多摩循環型エネルギー協会)は、原発に依存しない循環型エネルギー社会の実現をめざす市民団体として、2012年5月11日に産声をあげました。
設立時に作られた多摩エネ協のパンフを見てみましょう。「みんなでつくる!あしたをつくる!いよいよ市民が地域のエネルギー循環にかかわる時代の幕開けです。」こんな高揚したキャッチコピーの下に、FIT(電力固定価格全量買い取り制度)を核にした屋根借りソーラー発電事業の構想図が描かれ、更に、多摩エネ協が掲げる理念を現実のものにするために、エネ協とは独立した組織として事業会社を作ることがすでに明示されています。
“たまでん”は、この設立時のストーリーにしたがって、2012年10月29日に合同会社としてスタートいたしました。
物語に例えれば、第1章「多摩エネ協の誕生」、第2章「たまでんの発足」、そして、第3章が「事業の立ち上げとエネ協活動の新展開」ということになるのでしょうか。いまは、まさに、第3章の幕が開き、新しい展開に向け役者が躍動し始めたところです。

“多摩エネ協”は、発足当初30名だった会員がこの1年で130名になり、“たまでん”にとってなくてはならないサポーターとして活動の輪を拡げ続けています。エネ協がなぜこんなに急速に会員を増やしているかについて考えてみると、ただ理念を理念として終わらせるのではなく、それを実現するためのものとして“たまでん”というプレーヤーの存在があったからでしょう。直接間接に会員自らがかかわれる場として“たまでん”というものがあり、自分たちが共有する理念とそれに対する何がしかの自らのかかわりが“たまでん”の上で現実の形になっていく姿を目の当たりにすることができることがこの団体の活力源になっていることはまちがいありません。

一方、大きな期待を背負って出航したこの小さな“たまでん丸”が、外海の荒波にもまれてあえなく難破してしまうのか、荒波を乗り越えて外洋を夢に向かって航行し続けることができるかは、一般企業では絶対にまねができない“たまでん”ならではの強みを身につけられるかどうかにかかっています。わたしは、その中心にあるのが、多摩エネ協に代表される“市民力”だと思っています。
ただ、市民力というと聞こえはよろしいのですが、真剣勝負のビジネス世界の側から考えるとむしろマイナス要因の方が目立ちます。プロとアマの違いと言ってもいいでしょう。高い理念や公益性を掲げて活動する多くのNPOや公益的団体が事業性という壁を乗り越えられないでもがいているのもそこなのだと思います。

わたしたちが市民力を最大限発揮しつつビジネスとしてもひとり立ちして発展させていくため選んだ道が、“多摩エネ協”という会員制の市民団体と、それと密接不可分な関係を保ちながら独立した会社組織でビジネスに徹する“たまでん”というプロ集団を設立するという仕組みだったのです。
多摩エネ協とたまでんが、それぞれがそれぞれの特徴を生かしそれぞれの異なる役割分担の下で渾然一体となって活動できたとき、これはわたしたちにとって最大の武器になるはずです。